BCAA

 回復を早めると謳われているものの、クライマーにはそれほど効果はない、ような。運動中に飲むとカタボリックになりにくいのはたしかであるにせよ、クライミングはいわゆる筋トレではないからなあ。

 

 と、いうか、筋肉がつきやすい人にとっては、かえって困ることもあるような気さえするのだけれど、どうなんだろう。

 

 どちらかというと、クライマーにとってのBCAAの利点は、安静にする働きのあるトリプトファン(これもアミノ酸の一種)の何かを―何だっけ―阻害することによる集中力の向上の方が、効果としては大きいのではないかと思う。これはカフェインの興奮作用とは性質が違うようだから、集中しつつもバーサーカーになっては困るクライミングには、適しているといえるのかもしれない。

 

 とはいえ、ためしにいろいろなタイミングでけっこうな量を摂ってみたものの、個人的には変化は感じなかった。パフォーマンス向上はともかく、BCAAを摂取しても回復のほうにそれほど効果を感じないのは、集中力が増してパフォーマンスが上がったぶん、限界近くまで身体を使ってしまい、ダメージが深くなっているという線も考えられる。

 クライマーという種族は頑張れると頑張ってしまうから、これだと差し引きマイナスになりかねない。ううむ、参るねえ。

 

 修業の密度が増すのは良いことだから、これは回復のためにそれ以外の対策を講じる必要があるという話になりそうで、それが禁酒や禁煙ならともかく、プロテイン摂取だったりすると、こんどは内臓への負荷のかけすぎじゃないかと心配になってくる。回復するにも負担はかかるわけで。

 

 このあたり、回復のためにプロテインを摂取しても、通常の範囲(体重1kgあたり2、3g)なら腎機能に影響は出ないということで落ち着いているようだが、ただでさえ酒で内臓を痛めつけている身としては、精製されたものを大量に一気に摂るというのは、あまり気がすすまない。筋トレ界の常識といわれていることがらでも結構ひっくりかえることがあるので、あまり安心しないほうがいいと感じる。

 

 となると、できるかぎり何もしない状態にしておくのが結論としては良さそうに思われ、そうすると禁酒、禁煙がやはり本手となるが、これができたら最初からこんなもの書かない。精製されたものを避けて、加工食品も避けて、酒とか煙とか毒を避けるって……キビシイぜ。となると、あとはよく寝るか、アクティブレストくらいしかできることはなくなってくる。困るねえ。

 

 あまりプッシュしすぎると、翌日どころかその次の日まで疲労がのこってしまう。翌々日になってようやくでてくるダメージもある。ある種の指の痛みなどがそうで、これは遅発性筋痛というよりは、関節や腱の炎症のように思える。

 どうも大きな箇所から先に痛みが出るような気がしていて、これはきっと身体を動かすにあたって重要な箇所が優先されているのだろう。指は一本動かなくてもまあ、なんとかなるものね。ならないときもあるものの、たいていのことはやり過ごせる。

 

 だからなにがいいたいかというと、定期的に2日以上のレストをとることは、末端の疲労をとって怪我のリスクを下げるのに有効だろうということです。このあたりは、あまり休みすぎても能力は向上していかないし、レスト明けの感覚のズレが怪我やメンタル面のリスクになったりもするから「身体の声を聴く」といういつものところに落ち着いてしまうのはやむなしである。

 

 トップアスリートはこの点に非常に長けている。強くなることより、強くなろうとしながら怪我を避けつづけることの方が、はるかにむずかしいのだ、おそらくは。