われわれにとってレストは思うほどかんたんではない。トライしたい課題が待っている―実際はただ在るだけなのだが待たせていると感じてしまう―のに、ベッドに寝たきりになっているなどというのは、多動症気味のクライマーにとってはなかなかに忍びがたい。
「レストは登るのと同じかそれ以上に大事です」
―知ってます。
「トレーニング中に強くなるのではありません。レストの間に適応するのです」
―わかってます。
「レストを入れずに連登してごらんなさい。宿題どころか登れていた課題も出来なくなり、下手をすれば怪我しますよ。そうなったら結局よけいに休まなくちゃならない」
・・・ええ、わかってます、わかってますとも。
「継続的に登りこんでいるクライマーなら週2日、とりわけハードにプッシュしている向きは週3日のレストが必要です。一週間のトレーニング時間が15時間を超えないように・・・」
・・・・・・
まったく、書いているだけで気が滅入ってくるけど仕様がない。せめてレスト日にうまく登らないですませるための方策を考えるとしよう。
そうだな、まず、何かしら身体を動かそうとするまえに、それが翌日のクライミングに影響するかどうかを想像してみよう。
たとえば、ARCは? ダメです。10級くらいのボルダー? ダメです。じゃあ、犬の散歩は? OK。
ちょっとしたハイキングは? まあ、いい。20キロのランニングは? ダメだろうな、たぶん。
たぶん問題は、クライマーがクライミングにあまりにも夢中すぎて―何が悪い?―、クライミングを取り上げられたら詰んでしまうという点にあるのだ。だから「レストしろ」といわれてほかのアクティビティで埋めようにもインセンティブが上がらないのだ。
・・・OK、だったらわれわれらしくレスト日の「目標」を定めるということでどうだろう。目標はもちろん、無事レストすること。もうひとつある。回復すること。
レスト日だから、動いてないから、ついでに軽くなろうと思って、食事をとらないなんて論外である。せっかく休んで回復しようというのに、その材料がなかったらどうにもならない。「疲れたら糖質、筋肉痛ならタンパク質、空腹感には脂肪」である。特殊な食材を摂る必要はない。普通にごはんを食べよう。
次に、レスト日の使いみちに関する提案。
1 めったに顧みないセルフケアをする。フォームローラーでゴロゴロと。ストレッチとかね。乗り気でなければ「ながら」でいい。録りためた番組を視聴したり、買ったまま放置しているDVDなど観つつでいい。
続いて
2 部屋の掃除をする。クリーニング出したり。
あとは
3 近所のスーパーで食材を買って、ちょっとした常備菜をつくる。
遅かれ早かれやらねばならぬ雑用をリストアップして、それで予定を埋めてしまおう。そうすれば、クライミングの日に心おきなく登ることができる。なんなら昼寝も予定に入れちゃうか。ちょっとした昼寝は成長ホルモンの分泌を促し、回復にとても役立つ。夜の睡眠に障らない程度に、ゴロンとしよう。
・・・まったく、レストするためにここまで工夫せねばならんとは。われわれはつくづくクライミングを愛しすぎている。