トレーニング頻度の最適化

 確立された原則というのはどこの世界にもあって、トレーニングにももちろんあって、なかでも古くから取り沙汰されているもののひとつが「レスト不足」である。

 

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 アダム・オンドラは1日2回のセッションを週6でこなしているらしいけど、「これを真似したらぶっ壊れるんじゃなかろうか」と感じるのは私だけではないだろう。なんでアダムがあれで成立してしかも強くなりつづけているか、正直いって幼少期からの長期間にわたる適応と経験と類まれなセンス、そしてそれら以上に純粋で透徹なモチベーションだとする以外にどうにもしようがない。

 

 9時5時ウィークエンドウォリアーな一介のリーマンボルダラーとしては、こういう鬼神の姿はモチベーションを上げるためだけに使ったほうがよさそうである。

 

 

 とはいえ、これでおわりにしてしまっても何なので、どのくらいトレーニングすればいいかについて、すこしばかり考えてみようと思う。われわれクライマーにとってトレーニングと登りの区別がつけづらいのはどうしようもないから、あまりその点には踏みこまず、とりわけ重要とみられる要素をいくつかとりだしてみようという腹である。

 

 

1 高強度→持久系

 もし連日のセッションを組みたいのなら、初日に強度の高いものを持ってきて、翌日はより低負荷の持久力トレーニングにせよ。どうしても3日連続でトレーニングしたければ高→低→中の順にせよ。

 

 

2 どこまで振り絞るか?

 いわゆるバーンアウト疲労でムーブが起こせなくなるまで追い込んだら、すくなくとも一日はレストが必要になる。だから連登したければバーンアウトさせるわけにいかなくなる。

 高強度のトレーニングを連続したければ、できないことはなくて、鍛える部位を分ける(スプリットルーティーン)方法もあるし、時間を短くして質を上げるスタンスもとりうる。

 まあこれはつきつめると「刺激を変えていけ」という原則につながって、トレーニングの多様性を担保するというところに落ち着きそうである。

 

 

3 レストできているかを測る

 前回のセッションから回復できているかどうかは、次のセッションの半ばくらいになればいやでもわかる。しかしこれでは遅いのだな。

 その日のトレーニングをはじめる前に、回復具合を測るという姿勢が必要だろう。あえて握力など計ってみるというのもありうるけれど(瞬発力の目安として。神経系の回復具合を見る)、まあこれもかなり億劫だよな。登りたいもの。その日その時になって、パワーエンデュランスから持久系トレに切り替える目安くらいにはなるか。

 

 

4 回復を早める努力をする

 ウォームアップ/クールダウン。当然か。もうすこしいうと、拮抗筋と補強としての体幹のコンディショニング。これはトレーニングと呼べるものだと負荷が高すぎるし、ストレッチだと軽すぎる、くらいの感じ。

 よく寝て、よく食べ、岩場に出かけよう。

 

 

5 周期的なレスト

 連日登ってレスト少なめ、またはオールアウトまでトライして2日休み、どちらのアプローチもありそうで、向き不向きはあるものの、トレーニングの多様性の原則に照らして、どっちかだけにしない方が効率は上がるだろう。

 

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 なお、このトピックを真剣に考えるようなクライマーは、年に1〜2週はまったく登らない日をつくって、蓄積疲労を抜く努力をすべきかと思われる。アダムにしても新年の2週間くらいはオフにしているそうだから。正月くらいは休めという話か。

 

 モチ食って寝ててもいいけれど、ストレッチや有酸素をして、底上げに努めるのが理想なんだろうな、きっと。

 

 

 

 

パタゴニア