ムーブができない理由?

 そりゃあいろいろですけれど。何か?

 

 ムーブの蓄積、すなわち動きの引き出しを増やすことが大事だといわれてじぶんでもそう思ってここまできたが、それがどういうことなのか、最近、ほとほとよく分からなくなってきた。ムーブ、それは思うよりはるかに緻密で複雑で、身体の記憶とでも書いたほうがよほどしっくりくる。

 

 バックステップだのヒールフックだの、名称でとどまっているレベルでは、何度くりかえしてもフィジカル以外に大した意味をもたらさない。じぶんにとって簡単すぎるルートを何となくトライするのは指皮と時間の無駄だ。

 

 身体の記憶、すなわち身体感覚のレベルでものを考えるのは、すくなくともすぐにはできないムーブのときで、だからこれはある程度打ち込んでいくなかで各自が発見するものであるように私には思われる。限界付近の挙動をくりかえして、身体がそれを記憶して、脳みそで言語化して、身体にフィードバックして、検証していく。そのくりかえし。

 

 データロガーとなる身体はたぶんものすごく高性能で、実は問題は自身の身体の感性の把握と言語化にある気がしてきた。われわれは、身体が記憶した精密きわまりないログをながめることはできるのに、それらが何を意味するのか分からないのだ。

 

 良いフォームの練習がこれとどう関わるのか、よくわからなくなっている。自分にとってむずかしい課題では、完登しようとする以外に何も考えられないから、フォームもへちまもないものなあ。

 

 ひょっとしてなにも考えずに難しい課題に打ち込みつづけることが・・・いや、それで向上するには身体の強さと気づきが不可欠で、それではセンスのひと言でかたづけられてしまう。

 

 ギュリッヒのいうとおり、クライミングでもっとも重要な筋肉は脳である、ということか。

 以上、連絡おわり。