パワートレーニング(2)

 これまで投稿してきたトレーニング法について、現時点でまとめておこうと思う。なんだかいままでしてきたこととちがう結論になりそうで落着かないが、これからのじぶんに必要なトレーニングだと思って無慈悲にまとめよう。

 

 しかし文字にすると感じが変わるものである。書くことによってじぶんが何を考えていたか明瞭になってくる。

 

 その意味では、トレーニング日誌は内容はもちろんだが、継続して書く姿勢を持つという一点だけでも有効であるといえるのかもしれない。ともかく、書いてみて、整理できていない部分を洗い出して、今後の課題にしていこう。

 

 代謝系で分類すると、とくにボルダラーは無酸素の領域にいる。シングルピッチのスポートクライマーですら、いわゆる有酸素の世界の住人ではなく、無酸素乳酸系の住人である。

 

 したがって、有酸素スポーツ用のピリオダイゼーションは、クライミング、とくにボルダリングにそのまま適用しないほうがいい。テーパリングだけを取り入れて、中身はわれわれ用にリビルドしなくちゃならない。なお

1 持久力はつけやすく忘れやすい

2 パワーはつけにくいが忘れにくい

 これらは事実であるらしい。

 

 つづいて、強くなりたければ現状より登りの強度を上げるしかないという、当たり前の結論を書かねばならない。「いやわかっているよ、いつもそうしている」と思っていたのに、ひょっとしてぜんぜん足りていなかったのではないかと、この頃うっすら気づかされつつある。

 

 

 さて、上記を踏まえて、とにかく速やかに最高グレードを更新したいボルダラー向けのラディカルなトレーニング・ガイドラインを考えてみたところ、以下のようになった。

 

・普段の登りでは、パワーエンデュランスを含め、持久力トレーニングをしない

 

・アップがおわったら、限界強度の課題にとりつく(刺激を変えるため、キャンパを入れたり、ボルダーキャンパスしたりする)

 

・トライ間のレストを3〜5分とる(レストの長さはトライの内容によって調整する。ワンムーブで落ちたら短く、ゴール前まで行けたら長く、など)

 

・疲れを感じるか、出力が落ちたらクールダウンして家に帰る

 

 これをおよそ2日おきに6週間継続する。レスト中は有酸素、体幹、ストレッチ、拮抗筋のコンディショニングに努める。

 

「拮抗筋とかよう知らん」というひとは、上記のトレーニングの前にショルダープレスをしましょう。腕立てとディップスまでできるとさらに望ましい。

 

 下半身はスクワットくらいはしたいところ。低負荷高回数で素早く動くのがよさそうである。

 

 これだと1回のセッションが2時間以内におわるから、時間がものすごく余るはずだ。そしてこの方法はすでに高い技術が身体に染みついている上級者向けだ。ワンムーブで一日がおわるなど、中級クライマーとしてはおよそ健康的ではないし、何よりクライミングが下手になってしまいそうである。

 

 アップとダウンの時間帯に、中程度のむずかしさの長モノを入れれば、すこしはマシになるだろうか。さらに推し進めるなら、強度を考慮に入れて

 

・高―低―中でまわす(低のときは長モノの時間をふやす)。セッション間のレスト日数も高―低―中に応じて調節する。

 

 これでセッションごとの刺激が変わるから、6週間で最大の効果が得られるだろう。問題があるとすれば、クライマーとして不健康な気がするのと、クライミングが下手になりそうなのと、長モノができる状況を確保できるかどうかと、余った時間で詰んでしまわないかということだ。わりと問題だらけだな。

 

 このトレーニング法は、普段から強度だ強度だとブツクサいっているボルダラーですら実は限界トライは不足している、という仮説に立っている。パワーはつけにくく、また、できないムーブばかりをトライして完登できないのはつまらないから、痛いから、怪我をしそうだから、無意識にさまざまな言い訳をして、パワーエンデュランス領域にまで強度を下げているのではないかという、そんな推測の上に成り立っている。耳が痛いぜ。

 

 持久力の要素を入れるほど、完登ベースで遊べるようになるし、それだと継続した時に成果も見えやすいものな。4×4なんてまさにそうである。ひと月もつづければちゃんと進歩する。

 

 限界トライしかしないから、怪我の危険があるって? なんとなく長時間登りつづけることによる蓄積疲労と比較したら、どっちもどっちだろう。

 何度も書くが、己にとってかんたんすぎるルートを登るのは、アップとダウン以外では時間の無駄だと思う。

 

 ・・・しかし持久力トレーニング全否定とはあまりにも極端すぎるような。パワー至上主義じゃあるまいし。技術志向はどこに行った? せめて6週間を過ぎたら、違う方面に注力しよう。

 

 技術面をいかに向上させるかについては、また別の機会に考えたいと思う(システムトレーニングやドリルの類)のだけど、ひとついえるのは、ある種のボルダラーにとって持久力トレーニングが実はスキルトレーニングになりうるということ。フィジカルな持久力はすぐに頭打ちになって、テクニカルな持久力というか、ムーブの精度や力の抜き方やフットワークやレストの仕方がうまくなっていくような気がしている。そしてそれはパワーとおなじかそれ以上に重要であると感じる。

 

 両方をカバーしようとして、どっちつかずになっているというのが、われわれの伸び悩みの根本的な原因なのかもわからない。あぶはちとらず、というやつか。とくにパワーが上がりきらなくなっている、なんて。パワーが上がるところまで強度を上げられない、限界に挑むことを無意識レベルで身体と精神が回避している、なんて。認めがたい。認めがたいが・・・