チョークが精神安定剤と化していることに最近になって気がついた。よく考えたらウォームアップのときなどは汁手だろうと乾燥手だろうとチョークはいらないんじゃないか。
液体チョークはそればかり使いすぎると皮脂を奪われすぎてよくないようである。皮膚がガサガサになるので身体が補修しようとして翌日以降かえって汁手がひどくなるように感じる。
アップがおわって目当ての課題にトライする前に一度つけ、乾いたら上から粉チョーク、でいいような。あとは大レストを挟んだときにつけなおすくらいでちょうどいい。
汁手、乾燥手は確実に存在する。どちらも掌の状態をうまくととのえてあげることがポイントになるのだろう。
塩化アルミニウムの入った制汗剤を使うと、手汗は劇的に減るようだけど、人体への影響は未知数である。基本的には無害とされているものの、このような特殊な用途に使うことは稀だから、実験結果もなく、なんとなくためらわれる。
乾燥手の方は、それはそれで滑ってしまったりするみたいだから―チョークをつけすぎたときとおなじである―、やっぱり大変である。このあたり、ホールドとの相性もありそうである。
あとは、指皮が過度に削れてしまうと汁手化するし、指が温まりすぎてもやはり汁手化する。これへの対処法はまだ見つけられていない。
現状、それこそ液体チョークを使って気化熱で冷やす作戦を採用しているものの、もっといい方法がないものか探している。いったん温まってしまうとちょっとやそっとでは冷えないのだな。そして冷えすぎても感覚が鈍るのでよろしくない。
何せ指は冷たすぎてもいけなくて、温めすぎてもいけなくて、そのちょうどいいポイントは人それぞれだから―クライミング界の質問コーナーの回答はだいたいここに行き着いてしまう―、各々試すしかないのだな。粉末チョークにしても、人によっては合わなくて手荒れが起きたりするようなので、これもいろいろ試してみるほかない。
指皮の減りと指先の熱については、スタティックにムーブを起こすことの多いクライマーにはあまりピンとこないかもしれないが、デッドやランジでホールドを叩くことの多いクライマーにとって悩みの種である。
叩いた次の瞬間に指がズレると、それだけで削れるし、何度も持ち直しすぎるのもやはり指皮にはよくない。
このあたり、上手いクライマーはホールディングに対する理解が深いから、ホールドを一瞥した段階でどこを持てば効くか適切に推測でき、ゆえに何度も持ち直す必要がなく、適切なムーブが見えて実行力もあるので無理なデッドやランジに頼らずにすみ、結果として指皮も自然と温存される、そんな具合になっているようである。
実はこれはクライミングシューズのソールの減り具合についてもいえることで、滑らなければそりゃあ減りにくいわな。
それで減ってしまった指皮をいかに回復させるかだけど、まあクリームを塗ることになるわけだが、個人的には断然馬油がいいと思っている。これは保湿しつつもベタつかないスグレモノである。
ベタついても気にしない人はワセリンでいい。あとはついでに「お休み手袋」などすればさらに良い。いい年したオッサンがこんなものを使うのは微妙だが、実際、治りがずいぶんちがう。
ちなみに深酒をすると指皮の回復は目に見えて遅くなります。当たり前か。
それでチョークだが、ブレンドする人もけっこういて、かなりしっとりした仕上がりにもできるし―フリクションラボのゴリラなんてしっとり系ですね―、香りつきの製品もあるから、こだわる人はこだわってみてもおもしろそうである。フリクションラボは細かいチャンク状になっていて、岩場でちょっと印をつけたりするときに便利といえば便利。
いわゆるブロックチョークはチョークバッグの中でガサガサする派と、指先に擦りこむ派に分かれて、どっちが推奨なのかいまだによくわからない。汁手の人は擦りこむ派が多いように見受けられる。
チョークアップしたあとに指同士がキシキシする感覚がいい、という人もいる。このあたり、実際のフリクションにどこまで関連があるのかは未知数である。
チョークボールは掌にいっぺんにつけられて、かつ粉が舞わないのが美点だろうか。撒き散らすのはあまりよくないし、チョークは無害ということになってはいるが気管支に良いとはいえない―あまり吸い込むと翌日咳が出ることもなくはない―ので、とくにジムでは課題だけでなく空気を読むことも必要だろう。当たり前か。
ちなみに、炭酸マグネシウムは胃薬に使われることもあるそうです。そのまま食べるのはアカンと思うけど…