価値

 ものごとにはそれにふさわしい価値というものがある、そういう話ではなくて。

 

 DIP関節(要は第二関節、拳頭にいちばん近い関節、カチったときに起き上がってくる部分)がホールドより上に来ていたらクリンプ、その状態で親指を乗っけたらクローズドクリンプ、ホールドと水平ならハーフクリンプ、と定義している人がいて、ほ〜と思ったのでメモ。

 

 それから、ポケットを持ったときにのこりの指をたたむと支持力が上がるけど、2001年に(どうやらアメリカで)行われた調査によればその率は48%であったらしい。そのレポートの結論が「のこりの指をたたむ動き自体がストレスフルで、慣れないとそれで怪我をするリスクがあるので、ポケットを持つときに指をしまうのはやめなさい」だったそうな。

 きっとクライミングとは無関係な研究者の仕事だったのだろう。支持力が1.5倍近くになるのに使わない手はないもの。のこりの指をしまうことに不慣れなら、時間をかけて慣らせばいいやんね。

 

 トレーニングにおいて、あるいは世の中のいろいろな事柄について、安全か危険かというのはそれほど容易に色づけできないと思う。安全なトレーニングだってウォームアップせずにいい加減なフォームで行えばデンジャラスだし、危険とされるトレーニングツールだってじぶんの耐えられる負荷の範囲内で行えば怪我をすることはない。

 ストレスを与えなければ適応はないのだから、これはつまるところ使う側しだいである。課題をトライしていて怪我をしたひとがいたら、課題ではなく怪我したひとがわるい。個人的にずっとそう考えている。

 

 握りつぶすカチとか一本指とか踏み抜かせるジブスとか、ジムであまり見かけなくなったのは、理由はいろいろ考えられる。あるいは持って引く・信じて乗り込む、よりも体操っぽい・アスレチックなムーブを体験するほうがおもしろいと感じる人が多いからかもしれない。見映えもいいしね。かくいう私もそのクチである。

 

 しかしランニングジャンプやダウン気味に手足同時に横っとびするムーブは控えめにいって「とっても」苦手。これこそ慣らさにゃならんなあ。

 

 何せ課題のホールド配置に導かれて身体ぜんたいがじぶんにとって無理のない範囲で動かされ流れていくのは、なんとも気持のいいものである。