レスト(5)

 渚、もといレストにまつわるエトセトラ。

 

 レストはおそろしい。何もできなくなってガッカリすることになるからだ。一定期間登りから離れたことのある人ならわかると思う。本当に「何にも」できなくなってしまうのである。それでとりもどそうと焦ってアップもなしに連登した挙句ようわからんところを怪我したりする。「何だよもう!」という感じになるが、ただただじぶんのせいである。「そんなリスクがあるのだから、かえって登りつづけたほうがいいんじゃないか」と思って久しい。

 

 真面目に考えるなら、レストの与える影響は期間によるし、登り手の練度による。トレーニングしているときに刺激が入って、レストしているときに適応する。これは事実だ。だからレストは大事、これも理屈だ。しかしねえ。アンダートレーニングということもあるしなあ。レストまで言い訳にしだしたら、もうどうしていいかわからない。

 「指痛い身体痛い振り絞ってもモチが出ない性能がどう考えても落ちはじめている・・・」こうなったら迷わず休めばいいのだが、そんなにわかりやすいケースばかりではない。

 

 このあたり、トレーニングプログラムをきちんと実行できる人間なら、レストの有難味も十全に理解できるのだろう。たとえば6〜8週間でもいい、継続して修業して上記の症状が出そうになるまで追い込んで、1週間休む。こんなん、よほどセルフコーチング能力の高い、自律した人間でなければ不可能だと思うのやが、世の修羅たちはそうやって強くなっているのだろうか。

 

 おまけに、レストのさらにおそろしいところは、一週間ぶりに―その一週間はすんごいイージーな登りかアクティブレストをしているわけです―気合を入れて登ったときにたいして成果がでない点にある。これはガクッとなるよ。

 

 でもですね、レストの効果というのは、その、レスト明けにいきなりスパイダーマンになれるとか、そういう感じではないみたいです。レスト明けの数セッションは、まだ神経系がつながっていない。要はこなれていない。トレーニングが実ったかどうかは、じつにレスト明けの週の終わりになるまでわからないのである。修業にも忍耐、レストにも忍耐、にとどまらず、レスト明けにもまだ忍耐。耐え難きを耐え忍び難きを忍んで、ようやくトレーニングの結果が見られるという。

 

 ・・・これで効いてなかったら、フテ寝ヤケ酒無理もなし、か。