ピーキング(2)

 トレーニング目標ごとにざっくり分けてみよう。

 

・スタミナ(一日中登り続ける、長距離のハイキング、タフネスと呼んだ方が近い?)

 

・有酸素乳酸系持久力(いわゆる持久力、エンデュランス、とても長い持久系ルート)

 

・無酸素乳酸系持久力(シングルピッチのルート、パワーエンデュランス

 

・無酸素乳酸系のパワー(ストレングス、比較的高強度だがスピードを制御できる)

 

・無酸素非乳酸系のパワー(高強度の短いボルダー課題、ボルダーの核心部、10秒以内)

 

 これらは独立しているところもあるし、絡み合っているともいえるな。パワーを上げれば付加的に持久力は上がるものね。この5つの配分だろうか。

 強いて言えばボルダラーにはスタミナと有酸素乳酸系持久力の重要性がグッと下がるというくらいで、それにしたって長い課題をトライすることはあるし、一日中岩場で登り続けるためにはスタミナが要りますね。すぐに疲れちゃって出力も精度もダダ下がりするようだと、目標課題を登るチャンスは少なくなってしまうだろう。

 

 この辺を考慮に入れつつ、ピーキングを分類してみよう。

 

1 1サイクルずつ1つの目標に焦点をあてる

 1サイクルはおよそ4週間前後、場合によって2〜6週まで可変。サイクルの中で、低強度量多め→高強度量少なめへと移っていく。

 

 よく見るクライミング用のピリオダイゼーションのパターンは、たぶんこれはルートクライマー用だと思われるが、

 

1有酸素系持久力(6週間)

2ストレングス(4)

3パワー(3)

4パワーエンデュランス(2-4)

5レスト(2)

 

 これは、たぶん取り入れやすいのがメリット。全体的なレベルアップによさそうである。

 

 

2 1サイクルを1週間と考える。2〜6週間をひとつの要素に使うのではなく、セッション日ごとに対象とする要素をスイッチする。仮に5要素をすべて平等に扱うとすると、

 

月曜 パワー

火曜 レスト 

水曜 パワーエンデュランス

木曜 スタミナ

金曜 ストレングス

土曜 持久力

日曜 レスト 

 

 これは・・・理想かもしれないがキツキツだ。負荷の調整も難しそうである。飽きが来なそうなのはメリットか。パワーの前後をレストと考えると、どう入れ替えても連登が避けられないから、リスクはある。ビビりすぎると向上に必要な刺激が足りなくなるし、突っ込みすぎると痛めるし。

 パートタイムクライマーとしては突発的な用事が入るとすぐにリズムが崩れてしまうのもネック。リズムを調整するのに労力を使うようだと継続は難しい。トレーニング記録をきちんとつける習慣ができていて、己の状態をよくわかっている、そんなクライマー向けと思われる。上級者向けですかね。

 

3 2と似ていて、1週間で全ての要素を考えるが、扱い方に軽重をつける。これは2が全部を一度に向上させようというのに対し、1つの要素を重視して向上させつつ、他を落とさないというもの。

 

 これはシーズン中のトレーニングサイクルと考えればいいだろう。2を実行しつつ週末外で目標課題をトライするのではどう考えても日数が足りないから。

 トライする過程で足りないと判明した部分を改善しつつ、何とか他を落とさないというという、これはこれでなかなかに綱渡りに見える。あとはこれだとたぶん伸びしろは小さくなるでしょう。

 このあたりはどこまでリスクを取るかなので、考え方次第になってくる。5つ全てではなく3つくらいにとどめれば、より取り組みやすくなるかもしれない。

 

・まとめ

 はじめは1で、目標課題がある人はそれに向けて3で。それでは物足りない猛者は2に挑戦するのがよいだろう。とはいえ、シーズンが終わったら、刺激を変える意味でも1を取り入れた方が望ましいと思われる。

 

 ちなみにここで重要な言い落としがあります。強度と量について言及していません。そしてもうひとつ、これ、2〜6週のサイクルまでしか見ていません。年間を通じた視点、つまりより長期的な見地に立たないとアレです、気がついたら弱点だらけになっている、なんてことにもなりかねない。

 

 いつもいつも「ガンガンいこうぜ」というわけにいかない。「いのちだいじに」のターンも必要である。ドラクエの「さくせん」に例えると、

 

ガンガン行こうぜ・・・出力最大で目標を倒しにかかる

バッチリがんばれ・・・通常モード

いろいろやろうぜ・・・初見の課題に対して、また煮詰まったとき

MP使うな・・・トライ数を間引け

いのちだいじに・・・レストタイム

めいれいさせろ・・・赴くままに登れ

 

 こんな感じか。ともかく、2は取り入れるにしても短めの期間にとどめた方がよかろう。まあリーマンボルダラーはオーバートレーニングになる前に怪我が先に来ると思われる。

 

 何よりもまず、現状分析と問題点の洗い出しが第一で、それと目標課題の兼ね合いになる。とくにわれわれのような種族には目標があった方がいい。

 岩に行かない人はコンペでもいい。コンペもしない人は新しいセットの特定の課題でもいい。無理につくれとまでは言わんけど、たぶん誰しも気になる課題のひとつやふたつあると思う。その課題を登るために何が必要で、いま自分が何を持っていて、何が足りないのか、そんな風に考えていくのがいい気がする。

 

 何も考えずに登るのもいいけど、たまにはこういうのもトライすると面白いし、自分のことをまた少しわかるようになる。それってかなり素敵だもんで。