持久力(4)

 持久力、それはボルダラーにとってほぼすなわちパワーエンデュランスを意味する。リードクライマーにとってはそうでもない。前に述べたとおり、ARC的な持久力も重要になってくるから。ベースとしての持久力ですね。ここにテクニックとメンタルの要素が複雑に絡んできて、持久力向上への取り組みを難しくしているものと見られる。ボルダーメインの人間なら話はシンプルなのだけど。

 

 持久力を高めるには、やばいパンプに耐えて動き続けることだと考えがちで、それは確かにその通り(過去に載せたラディカルな持久力トレーニング案を参照)なのだが、もう少し違うアプローチもできるんじゃなかろうか。

 

 持久力を上げるために有効なアプローチとして

 

1 神経系のトレーニングをして最大筋力を上げる

2 パワーエンデュランスを上げる

3 ARC的な持久力を高める 

 

 あたりが考えられるだろう。

 

 このうち1は筋肥大しないから自重も増えないし、キャンパでもフィンガーボードでも限界強度のボルダリングでも取り組むことはできそうだ。2については4×4かインターバルトレーニング、3はARCをしなさいと、こういうことになりそうである。

 

 ARCについてはムーブを洗練させるスキルトレーニングの面もあるから、ARCだけが妙に苦手またはレッドポイントグレードに対してオンサイトグレードが著しく低いと感じる場合は、ここに注力するとムーブが洗練されて、とくに部位鍛錬をしなくても今のままでベタークライマーになれる可能性がある。

 

 逆に長モノはいくらでもできるけれどいまいちパワーが出せないという場合は1だろうし、目標課題の核心がなかなかつながらんという場合は2にフォーカスすることになるだろう。

 

 1〜3から今の自分に欠けているものを取り出して集中的に取り組むのもいいし、目標課題があるなら、それ対してどの持久力が不足しているかを洗い出して、それに向けてトレーニングすると、トレーニングの特異性にもかなうし、モチベーションの面でもより継続しやすくもなって、好循環に入れるかもしれない。

 

 ボルダラーは年じゅう1ばかりでたまに少人数のセッションやコンペなどでなどで2の状態になるくらいだから、とくに目標のないオフの期間はARCやスキルトレーニングを入れてムーブを洗練させる練習をするのがいいかもしれない。セッション方式のコンペ前に4×4をするのは理にかなっていると思う。逆に岩しかやらず手数の多いものは好かんという人は2にかける労力は少なくなるだろう。では3はどうか。

 

 一般に、ボルダラーは力を出すのは得意だが、セーブするのは苦手で、おまけに短期決着型の人間が多い気がするから、長モノなんてまだるっこしいものには食指が動かない。だからこそ、かえってこの点に注目すると、気づかなかったことが見えてくる可能性がある。10手だったらパワーで成立させられても、100手や200手になればそうもいかなくなってくる。

 

 以前の記事で触れた通り、エネルギー代謝機構のことがあるから長時間ハイパワーは出せないようになっているし、ハイパワーを出すと後で反動が来る(あっという間にパンプして落ちてしまう)。どうしても力をセーブせざるを得ないような状況に身を置くことで、ようやく省エネな動きが身につくのはないかという話。これは怪我の予防にもつながるし、動き全体の質も向上することだろう。

 

 ルートクライマーの場合、多くは1か2に焦点をあてることになるだろう。このうち1がもっとも手っ取り早いのだが、たぶんボルダラーにとっての長モノのような関係なんだろうな。それに、目標課題にトライしている人を見ていると、パンプした状態で核心をつなげられないというパターンの方が多そうだから、2の方が特異性の原則に合うのかもしれない。

 

 おそらくそんなわけで、ルートクライミングのトレーニングサイトなど見ているとパワーエンデュランス系のプランが並んでいるのだろう。それ自体は非常に重要ではあるものの、持っているパワーの範囲内で筋肉の有酸素的な性能を上げる(ミトコンドリアに頑張らせる)という話だから、オフの時期には1に取り組んで出力そのものを上げる努力も必要かと思われる。

 

 そんなことを言っても、もはやシーズンに入ったし、目標課題しかトライせんし、というルートクライマー向けに何かないかなあドラえもん(続く)。