Common Pitfall

 「登っても登ってもグレードが上がらないとはどういうことだ、こんなに頑張っているのに」なんてどなりこもうにも、クレーマーも窓口もじぶんだからやり場がない。頑張っても伸びないのはツライものである。

 

 上達曲線の勾配は先に行くほど緩やかになるものだから、そのあたりは受け入れないとならないが、それにしても、である。

 何年も同じグレードでもがきつづけていると、そのうちにその日その状態で一生懸命トライするのが目的化してしまって、コンディションを高める努力を忘れてしまうことがある。とくにクライミングはできるかできないかのところをトライするのがおもしろいので、グレードを気にしなければ不幸になることもない。そもそも取り組み方はひとそれぞれである。

 

 まあ、そうはいっても、これもある程度までしかあてはまらなくて、それというのも「できなかったことができるようになる」のがクライミングのもうひとつのおもしろさになっているからだ。それを端的にあらわすものがグレードである。われわれは個人的限界をプッシュして前進することに喜びを感じる種族なのである。

 

 頑張っているのに伸びない、そんなときは、努力の方向をまちがえていることもあるけれど、もっと多いのは、すでにけっこう頑張って伸ばしてきているために、頑張った結果としての伸びが小さくなっていて、目に見える形にまでいたっていない、つまりグレード更新には足りないが近づいている、こんなケースである。

 

 終点もわからずひたすら走りつづけるのは精神的にキツイから、われわれはいくら頑張っても伸びないと感じると、結果が数値化されやすい筋トレに走ったり、片手懸垂でもしてみようかと一芸に取り組んでみたりする。普通のことだと思う。

 

 それで考えたのだけれど、いつもの登りを数値化して、漸進性の法則をあてはめられるように工夫してみてはどうだろう? たとえば初段を10点、1級を9点、2級を8点、3級を7点、というようにして、その日のうちに登った合計を出して、少しずつ増やす努力をするのである。岩場で一日合計何段、などでもかまわない。

 

 それも面倒な人は毎月ロッキーを巡礼して集大成をトライしてもいい。あれは上位10課題の合計点だから、継続するうちに数字が収斂してきて、自然とじぶんにとってむずかしい課題をさわるようになる。使わない手はないと思う。

 

 あとは、プラトーに入ったと感じたら(というか、そうでなくてもいつでも)、毎回の登りの内容を密に記録することである。あとになって客観的に把握できるものがあると、長期的に自分がちゃんと伸びていることがわかってくるものだ。

 

 チマチマ記録をつけるのは面倒だけど、ためにはなる。その時その場でつねに強くありたいのはわかるが、こつこつと努力して、格好いい課題を登るというのも、いいのではないかと思う。