ストレスマネジメント

 つきつめると己を知れということかね。クライミングだけの話ではなくなってくるようでもある。

 

 クライミングするだけで強くなっているうちは、ほかに何もしなくていい。それでどこまでもいくのが理想だ。それで赴くままに登りこんでどこかで行き詰まって、トレーニングのことを考えざるを得なくなる。

 いいかえると、この段階に至ってわれわれはようやく中級者になるのかもしれない。

 

 与える負荷と回復のバランス、どこまでいってもこれがついてまわる。ウェイトトレーニングの指南書などひもとくと、初級者、中級者、上級者のちがいはここにあらわれるらしい。

 

 最大強度のトレーニングを行ったとき、回復にかかる期間は、たとえば

 

初級者 48-72時間

中級者 1週間

上級者 1か月

 

 になりうるという。

 われわれの場合、ウェイトリフティングとはちがって動作が毎回変わるし、スキル主体のあそびだから、まったく鵜呑みにできないが、上にいくほど向上するために大ダメージを与える必要があり、回復のためにより長く時間を割く必要が出てくる、そういうことのようである。

 

 強度の高い運動をした日はとりわけよく休みましょう。こう書くと当たり前だが、そういうことのようである。

 

 それでスキルはどうやって身につけるか。クライミングのフォーム、力の入れかた、動きかた、それらを限界付近の課題をトライしている最中に考えることはできない。そんな余裕はない。

 

 いっぽうで、じぶんにとってマージンのある課題ばかり登っても進歩はない。限界のトライをしている時に、そのための刺激が入る。

 

 自分にとってあまりに簡単すぎるルートを何も考えずに何度も登るのは時間の無駄だ。そういった課題はフォームや呼吸の練習につかうのがよさそうである。

 

 フォーム練習と、限界を押し上げる練習をわけて考えるべきなのだろう。これらは車の両輪であり、上達への道をまっすぐ走りたければ、どちらも気にする必要がある。

 

 さて、他種目からトレーニング法を借りてくるときに留意すべき点は、それがクライミングとどんなふうに似ているか、である。たとえば、ウェイトリフティング、ランニング、サイクリング、水泳、これらはおなじ動きをくりかえす点ではクライミングとはかけ離れている。ウェイトは無酸素でほかは有酸素運動であり、これもクライミングと比較する必要がある。

 

 ある種の有酸素系のピリオダイゼーションだと、たとえば4週間の持久力トレ、3週間のパワーエンデュランス、2週間のストレングス、1週間のレストといったような形が考えられるが、この場合、パワートレーニングが入らないから、クライミングにはあまり向かない。量の面でテーパードしていくアプローチはそのままに、中身を変えていくのが基本路線になるだろう。

 

 絡み合った複雑なプランはとても実現できそうにないから、ひとまずできるだけ単純に考えてみよう。パワーだけに注力するなら、努力レベルを常に100%付近にすればいい。つまり、強度はつねに最大(宿題になるレベル)として、量だけでセッションを評価する。そうすれば量に応じて自然に回復期間は決まってくるから、とてもシンプルになる。

 ・・・そんなことできるかなあ。アッというまに壊れないか?

 

 

 とりあえず、強度をどうやって評価するか、からだな。カロリー計算のように単位をつくってみるか。上記のプランだと、アップとダウン以外は宿題になるレベルの課題しか触らないから、

 

1単位―完登、ゴール落ち、各ムーブを全てバラす、核心だけ3回バラす、核心以外のセクションを2回登る

 

 としてみよう。これで高―低―中サイクルに1週間サイクルで落とし込んでいく。トンデモ計画のような気もするが、6週間これやったら、すくなくともパワーは上がるような。クライミング下手になりそうだな〜。