実包

 大体においてソロで登る連中は引込み思案である。彼らはひとりで岩場に行くのが好きだし、ひとりで岩場にいるのが好きだ。誰かの邪魔にならないからである。そして和気藹々とした仲間たちが近づこうものなら、山を下り、反対側の斜面を登って、岩頭に身をかくすのだ。

 

***

 

 前回の続き。そんなこんなでようやく山に向かったわけだけれど、あまりにも久しぶりすぎて、途中で右折しなければならないところを直進してそのままずうっと行ってしまった。無意識に釣り場に向かってしまったのである。

 

 戻るのも億劫なので手近な脇道から登ったところ勾配がキツい。ようやく登ったと思ったらその先でまた道を間違える始末。今度こそ戻るしかないのかと暗澹としていたら「山頂←0.9㎞」という標識が見つかったので、そのまま自転車を担いでハイキングコースを登ることにした。シクロクロスもどきである。

 

 「900メートルだしすぐだろう」と思ったら随分かかった。ああいった標識に書かれている距離は本当に合っているのか、こういうことがある度に疑わしくなってくる。いやもちろん合っているに相違ないのだけれど。ぶつぶつ。

 

 昨年の今頃と違って、山中はずいぶんイノシシに掘り返されていた。今年は個体数が多いのかもしれない。ドングリはたくさん落ちているから、堅果類を好む彼らにとってはいい環境なのだろう、きっと。

 

 ぼちぼちこの辺が鳥獣保護区なのかどうかも調べておいたほうがよさそうだ。岩を探して自分がくくり罠にかかったら洒落にならない。

 

 岩の方はとりあえず5課題登って撤収。身体はぜんぜん動いていない。とはいえ、去年は靴を履くのも難儀して、1課題もできなかったことを考えると、相当マシになっている。

 何せムーブだの連動だのというレベルではない。ただかじりつくのみである。

 

 うちに帰ってニュースをつけたら、アナウンサーが「去年と比べてイノシシの目撃件数は倍増している」と話していた。どうやら増えているのは本当らしい。

 

 次回はいつものコースを走って坂を登りきれるかどうか、話はそれからである。足拭きマットも忘れずに。以上、経過連絡!