ベストプレイス

 ポイントをそう簡単に教えないというのは、岩に限ったことではないようだ。岩場の情報を必ずしもオープンにしないように、釣り場にもメディアに出るようなものもあれば、まったく話題にならない場所もある。

 

 もちろん、いろいろと理由は考えられる。場を荒らされたくないというのは共通の理由だろう。しかしこういうのは、場所探し自体がたのしみのひとつとなっている、というのも大きいのではないかと思う。

 

 とくに釣りに関しては、岩の課題と違って、その情報を共有する必要はないっちゃあ、ない。いったん釣ったらそのぶん確実に獲物は減ってしまうと考えれば、釣り場の共有はナンセンスだろう。

 

 とはいえ極端な話、海岸線なら何かしら魚はいる可能性があるわけで、登攀可能な岩の数と比べたら、資源のポテンシャルはぜんぜん違う。日本は岩資源も恵まれている方だが、魚資源の方がもっと恵まれている、と言ってしまって差し支えないだろう。岩ならなんでも登攀の対象になるかと言ったら、そんなことはないものね。魚の方はたいてい食べられるという印象である。

 

 できそうでできない難易度の岩は貴重で、登る側からすれば、奇跡的な造形というか自然からの賜物というか、本当にそういう感じになる。それだけに、そこに登攀ラインを見出すこと自体が、創作的な行為に近づいてくるわけなのだけど。

 

 あ、でもこれは釣り場も変わらんか。うまいクライマーがルートを見て、どこが核心でどのようなムーブで登るかオブザベーションできるように、腕のある釣り師なら、岸辺に立ってどこがポイントでどんな風に釣れるか、見えるのだろうから。

 

 そう考えると、今の自分はいろんな課題を触って手当たり次第に思いついたムーブを試している段階なわけか。なかなか魚が釣れないわけだ。

 

 しかしまあ、こんな風にものを考えるときに比較対照する対象があるのはいいことだ。自分の状態が多少とも明瞭になってくる。

 さ、今日も釣りに行こう。