「ボルダラー チョークなければ ただの人」
***
岩場に着いてチョークを忘れたことに気づいた、というだけの話。
サザエさんじゃあるまいし、爆風の中を急坂を登って山を歩いて、ようやく岩場に辿り着いてチョークがないなどというのは、どう考えてもボーンヘッドと言うほかない。ボーンヘッドがどこから来た言葉なのか知らないが、ちょっと今は調べる気にならない。
最初は「寒波と爆風で快適ではないけれども、その分気温も湿度も低いし、フリクションはいいはずだし、それに高難度を触るわけでもないのだし、ノーチョークでもどうにかなるだろう」というような甘い考えを抱いていたのだが、2トライほどで現実を思い知らされた。
単純に、ものすごく、登りづらい。できていた課題がことごとくできない。持てていたホールドが持てなくなる。ただ持てないだけならまだしも、持てば持つほど、自分の手のヌメリでホールドを悪くしてしまう。悪循環である。負の連鎖である。蟻地獄である。沼である。もうとにかくジリ貧である。ドツボに頭から突っ込んでいる。
チョークを忘れたときに我々にできることといったら
1 できる限り持ち直さず
2 少ない回数で登る
そのくらいではあるまいか。ムーブ探りなどしていたらそのうち離陸できなくなりますぜダンナ。
その辺の落ち葉で手を拭いてみたり、岩に触って指先を冷やしてみたり、いろいろやってみたがぜんぜん効き目はない。焼け石に水というかヌメリ手に木の葉というか、とにかく微力すぎて何の役にも立たない。
チョークはエイドと言われようと、景観を損なうと言われようと、岩場にチョークは持っていこう、そう思った年末の週末だった。ブラシも忘れずに。Happy climbing!