烏賊餌木考3

 現時点で大体こんな感じだろうと思っているエギの仕様の変遷。

 

・接続部→組紐からスイベル、スイベルからアイへ。

 

・オモリ→四角型から穴あき流線へ。

 

・カンナ→鉄鋼からステンレス、半笠から全笠。一段から二段。

 

・ボディ→布無しから布巻き。

 

・素材→木から樹脂。

 

 総じて漁具からルアーに向かう動きと捉えればよさそうである。アングラーが自在に動かせるよう接続部の遊びをなくし、飛距離を伸ばし沈下姿勢を安定させポイントをタイトにアグレッシブに攻めるべくオモリ形状を整え、購入後にチューンしやすいようあらかじめ穴を開けておく。掛けやすさと錆びにくさを求めてカンナの段数と素材を変更する。

 

 再現性の高い動きの追求はより安定した素材を呼び、安定した素材は大量生産を可能にする。結果として供給は安定し、供給が安定すれば価格も適正化する。

 ケイムラや夜光にしやすいのも樹脂製ボディ採用のメリットなのだろう。布や下地の色もそうだが、エギングは使うルアーがエギのみだから、釣り人が選択する楽しみをどこかで提供する必要がある。何せ遊びにおいては気分が大事であるとつくづく思う。

 

 釣果目線の合理性の追求と、工芸品としての鑑賞、いわば仕事と遊びが混じり合って、現在のエギの形を作り上げているように見える。純粋に釣果だけを追求すれば漁具に近づき、漁具となれば釣果は売上高となる。釣具においては、進歩する技術が決して釣果向上のためだけに使われないというのがいい。釣果に直結しそうな形状、布の有無、カンナの仕様が収斂していかないというのが、いかにも趣味の品らしくて好感が持てる。

 

 エギの形状は姿勢および動きと直結するはずだが、肝心の理想的な沈下姿勢がはっきりしないのだから、形がまとまるはずもない。水平がいいとかやや頭下がりがいいとか言われてはいるものの、結論は出ていない。これからも出ないだろう。

 動きにしても、ヒラを打ってはいけないという人もいれば、積極的にヒラを打つ製品もある。これは目指す動きが魚なのかエビなのかで違ってきていて、もともとエギがエビとも魚ともつかない形をしているのだから、これはもう、話はまとまらなくて当然である。

 

 結局のところ、こういうのはフィールドワークでデータを積んで実証すれば、どれが釣れやすいのかは自ずと絞られていくはずだが、おそらく釣り人という種族は、それをはっきりさせたいとは必ずしも思っていない。遊びを自分でつまらなくすることほど愚かなことはないのだから。