烏賊餌木考

 「分け与える時は一番おいしいものをあげるんだよ」(安達哲バカ姉弟』)

 

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 釣具店の中古コーナーに、自分が「こういう形のエギがあったらいいな」というそのものが300円で売っていて思わず買ってきた。下の写真のエギである。

 

 要は「オモリがボディと一体化していれば段差がなくなって海藻も引っかからないし、空気抵抗も少しは減って飛距離もマシになるし、さらにそれが半笠だったら相当快適に使えるんじゃない」というシロモノ。部屋で計ったら3.5号で19gだったので、標準的なウェイトである。フォール姿勢やスピードに特筆すべき点はない。

 

 店頭に並んでいないところを見ると、流行りはしなかったのだろう。メーカー名も刻印されていないし、ひょっとするとハンドメイドかもしれない。そういえば「九州地方では昔からエギを自作する人が多い」と20年近く前のエギング雑誌で読んだが、これも本当か知らん。ちょっと自分では作れる気がしない。

 

 

 さておき、来シーズンに使うエギである。いつもの半笠エギを大量に買って、ノーマルとシャローチューンしたものとを使い分けようと考えている。

 

 オモリの穴の位置で沈下姿勢に影響が出るのだが、できるだけ簡単に考えて、6.5㎜穴をど真ん中めがけて開けることにした。これでSからSSの間のどれかになる。

 

 これに3㎜穴を追加すると、SSからフローティングの間になることが判明したので、次回以降、追加で穴を開ける場合は2㎜か2.5㎜にする予定。件のプロフィッシングハヤシ製のエギはいったん売り切れてしまったので、確認は次の入荷まで持ち越し。

 このハヤシの半笠エギも、作りからして手仕事かと思われる。大分型というのか、いわゆるスタンダードな形状で、とくにノーズが細いわけではないから、市販品のような規則正しく鋭いダートは難しい。

 アイの部分は紐で、要はフリーノット状態なので、無理に連続で動かそうとすると、餌木がヒラを打ってしまう。その代わり、激しく連続で動かさない限り、エギは放っておいても潮上を向こうとしてくれる。

 オモリの形状も、昔のエギのオモリのように武張った四角ではないものの、さりとてメーカー品のように工夫が凝らされているわけでもないので、飛距離や沈下時の安定性、スナッグレス性能に特筆すべき点はない。

 総じて、ジャークよりはシャクリ、メインはズル引きのエギと考えていいと思われる。オモリに穴を開けると、沈下姿勢をあまり変えずにフォールスピードが変わってくれるところも、浅瀬でのズル引きに向いていそうである。

 

 というか、このエギが売り切れるということは、夜釣りのズル引き師たちが今も暗躍しているということだろう。昼間にズル引きをしている人はほとんど見かけないが、浜の常夜灯付近の波返しの上に複数の墨跡があるのは確認したので、おそらく潮の満ちる夜はそのように釣っているのではないかと想像している。

 

 このエギの弱点は、紐やパーツの強度もあるが、なんといってもカンナである。先はシャープナーで研げばいいが、錆はどうしようもない。シリコンや防錆スプレーなど、いろいろ上から吹きつけてみたがダメだった。

 渚でこのエギを落としてしまうと、あとになって回収できたとしても、ハリ先は完全に丸くなって使いものにならなくなる。これを研ごうとしたら日が暮れてしまうので、できるだけなくさないように気をつけて、釣行後は錆を落として使うしかないが、それにも限界はある。

 

 ステンレス製の電気コーティングされた半笠のカンナがあればいいのだけれど、市販品のカンナはことごとく全笠というジレンマ。ニッパーを買ってきて自分で直す費用と手間を考えたら、新品を買った方が世話はない。何せ300円なのだ。

 

 どうやら半笠はエギ界の中で半ば淘汰されてしまった種族で、昔のエギの投げ売りコーナーにひっそりと置かれている、というのが現状のようである。こちらとしては助かるのだけど、不思議といえば不思議なんだよな、こういうの。