一風堂

 レッドポイントとは、いわば旅路であるという。その途中にいくつもの落とし穴のあるステージであるという。途中で道に迷うこともあるし、旅のしおりもないから、準備不足だって起こりうる。計画を立てて実行する技術、こういうのを何というのだろう。質実剛健かつ意気軒昂で堅忍不抜で不撓不屈なそれを何と呼べばいいだろう。

 

 それはともかく、目標課題への取り組みから得られるものはそれじたいプレシャスでプライスレスである。その経験を今後に生かして、ますます高めていくわけだ。あろうことかクライミング以外にも自然と活用されてしまう。そう考えるとお得な遊びだな、コレ。

 

 とはいえ、そうはいっても、レッドポイントって、あの、なんとなくルートを見に行って、ヤベえなと思って、帰ってきて、また行って、ひとまず触って、打ちのめされて、帰ってきて、また行って、帰ってきて、気がついたら魅せられて、トライアンドエラーで、修業して、いろいろあって、最後には登ると、そういう話でしょ?

 

 ・・・まあ、それはそうなんだけども、週末クライマーの場合でもうすこし長いスパンで考えるとどうなるんだ、という話。

 

 仕事も1年のうちに繁忙期もあれば閑散期もある。私生活もいつも凪いでいるわけではない。時間軸を大きくとると、人生における優先順位のつけかたにまで話は広がってくる。1シーズンで登りきれる課題ばかりではないからだ。

 

 その旅を成功裡に成し遂げるのにもっとも大切なのは学ぶこと、とりわけ過去の経験を生かすこと―それが成功であれ失敗であれ―、それが重要なのは周知の事実で、たぶん、困ったときに思い返せる奴は、これまた上級者といっていいのかもしれない。

 

 あ、そういえばレッドポイントって、ドイツのレジェンドクライマーのカート・アルバが、登ったルートに赤いマルをつけたのが由来なのだそうです。