持久力

 レッドポイントグレードよりけっこう下の課題でもパンプしてしまう。またはルートの途中でレスト地帯があってもイマイチ回復しきれない。そんなときはARCトレーニングをしてみてはどうか、という話。

 

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 ARCといったら『パフォーマンス・ロック・クライミング』で推奨されていたくらいだからけっこう前からあって、近頃はあまり聞かないから効果も疑問視されているのかと思いきや、そんなこともないようである。昨今のルートがボルダー化してパワー系のトレーニングに軸足が移っているだけで、ちゃんと効きめはあるみたいだ。

 

 ARC、Aerobic Respiration Capillarity、アーク。目的は前腕中の毛細血管を増やすこと、すでにある毛細血管を太くすること。ARCトレーニングにより、登りながら回復できるグレードを上げることができる。

 

 12クライマーが10台を簡単に感じるとき、

 

1 最大筋力に付随して持久力が上がっている

2 純粋な持久力が高い

 

 このふたつが理由として考えられる。2の意味の持久力は、10台で30分以上登りつづけることができ、しかもパンプしない、そういう能力のことを指す。これにアプローチするのがARCトレーニングである。

 

 パンプの原因というのはかなり大きな問題で、ボルダーメインの身としては基本的には門外漢なんだよな。したがって持久力トレーニングについてもそんなにピンとこないことが多いのだけど、たしかに長モノをひたすらつづけていると、長時間ヨレずに課題を打てるようになるのはたしかだから、キャパシティを上げる、トレーニングの器を大きくするという意味で、持久力トレーニングはボルダラーにとっても無視できない要素なのかもしれない。

 

 パンプの原因のひとつに、酸素を十分に含んだ血液が供給されない、というのがあるらしい。酸素によって筋肉がATPを効率的にうみだすことができて、収縮した筋肉をもとの長さに戻すためにコイツが必要なのですな。

 

 したがってATPが不足すると、筋肉は縮んだままになって、手の指なんかひらかなくなってきちゃう。いったんこうなると前腕の毛細血行も悪くなって、そうするとますます酸素が行かなくなって、悪循環に陥る。この毛細血行を良くしよう、前腕に十分なATPを供給しようというのが、持久力トレーニングの目的のひとつである。

 

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 ARCトレーニングの概要は、一回に15〜45分程度のイージーなクライミングを連続して行うことで、ごく軽いパンプを感じつつひたすら動きつづけるというもの。方法としてはボルダー壁を使うか、トップロープ/オートビレイで地面につかずに昇り降りするのが一般的。垂壁かうす被りが好適だが、傾斜が多様な壁があればテクニック的にもより望ましいし、一本調子になりにくいのでなおいいだろう。

 

 次に、どれくらいの強度のルートを選ぶかだが、ARCトレーニングをはじめて行うなら、5.6や5.7からスタートして、必要に応じてグレードを上げていくのがよい。トラバース、またはグレーディングされていないルートを登る際は、かる〜くパンプするようなホールドを選ぶこと。とにかく長時間登ることを第一に考え、落ちる可能性のあるムーブは行わないこと。シェイクするために停止することなく動きつづけられれば理想的である。

 

 頻度については、ARCトレーニング(最長で4週間以内)の期間中に週2〜4回、または週1ペースでその他のトレーニングにミックスすることが考えられる。なお、ARCはアクティブレストにも有効で、長期レスト明けなどは、2週間ほどARCをすると、スムースに戻ってこられます。

 

 

 まあ、このトレーニング法のいちばんの問題点は退屈だという点かもしれないな。これを防ぐ方策として、いろいろなムーブを入れる、ポジショニングと呼吸を意識する、同じルートを異なるムーブで登る、数分に一度は強い呼吸で比較的ハードなムーブを入れる(落ちたらアカンけど)などが考えられる。

 

 これでも飽きてきたら、行ったことのないジムに出かけて、3級以下をすべて登る、などでも実施可能である。クライムダウンして距離を稼ぎつつ、パンプしないように最低限レストしつつ行う。あまりにパンプしてしまうとARCトレーニングの埒外に出てしまうから。ルートジムならパートナーと交代しつつトップロープのルートをすべて登る、というのもありますね。

 

 ちなみに、短めのARCはクライミングやトレーニングセッション前のウォームアップにも使えます。以上、連絡おわり。