のばし持ち

 クリンプはカチ持ち、オープンハンドはのばし持ち、かなあ。

 

 ずばりカチッと持つカチ持ちに比して臨場感が足りない気がする。押さえ持ち、だとぶらさがっている気分が出ないし、掛け持ち、だと伸びている感じが足りないし―カチ持ちだって掛かっている―、ペタ持ちではスローパーを強烈に連想してしまうし、もろもろ考えるとまあ、のばし持ち、くらいが妥当なのだろう。

 

 そんな程度だから「いっそカタカナにしてしまえ」となって、それでオープンハンドとなり、それだと長いからオープンが市民権を得ているものと思われる。われわれはけっこう大胆に省略するのが好きだから。

 

 カチ持ちをクリンプと呼ぶ人があまりいないのは、カチッと持つカチ持ちが呼称として秀でているからだ。もっというとこれはホールドからはじまっていて、カチッと持てるホールドはもうその段階で「カチ」と呼ぶことができてしまう。向うだとエッジをクリンプするかオープンハンドで持つと、そういう二段階の順序になることが多い気がする。

 

 こちらだと「あのカチを云々」といういいかたになってそれを平然とオープンで押さえたりするから、なんだかもうよくわからなくなってくる。「カチ」といわれるとカチったほうが適切なように聞こえてきそうなものだが―ことだまは強力である―、そうでない場合もあるということか。まあもうオープンでいいということか。「オープンで持ててカチで持てないホールドはあるが、その逆はない、だからオープンを強くしよう」とはよくいわれるものの、これもそんなにかんたんな話ではないような気がする。

 

 ジムのインカットしたホールドの場合、第一関節のできるだけちかくから指を入れると、指の腹ぜんたいがインカット部分に入って、手前に引けるようになる。基本的には、壁からカリカリ音がするくらい指を入れようとすれば、自然にカチの形に指が起きてくると考えてよさそうで、そこに親指を足すのだが、そのやりかたもまた人によりけりだ。

 

 インカットしたホールドをオープンで持つ時は、引っ掛けたまま押さえる、そんな感覚がよさそうで、オープン派は基本的に手首と前腕のラインが一直線になっていることが多い。これはたぶん身体に優しい。この状態のまま力をかけつづけていくイメージがいいと思われる。カチ持ちすると手首はどうしても背屈してくるからなあ。

 

 とはいえ、最初はオープンで持っていても、押す意識を強く持ちすぎると、力をかけるにつれて手首が背屈してきて痛めることもある。このときに掛かっている指先に意識が集中して、そうなると第一関節から握りこんでしまうか、オープン派だと自然にハーフクリンプの形になることもこれまたよくある。これは第三関節から曲げるイメージを持つことで改善できそうな気もしている。

 

 何せ、第一関節から第三関節から掌まで、すべてのパーツをうまく使うことが肝要なのだろう。第三関節から自然な丸みを作ることだけを意識して、手首を極端に曲げることなく動けたら、まあ、関節には優しいだろう。ちょっとためしてみよう。