はじめの一歩

 はつづいている。昨日コンビニで新刊を見つけたので買ったという、それだけの話。

 

 そういえば、100巻を超える漫画ってどのくらいの数があるのだろう。そのうちにまたグーグル先生に聞いてみよう。

 

 まったくこのご時世、なんでもグーグル先生である。数年まえに参加した会議で、ひとりが冗談交じりに「Google Empire」と発言していたのをおぼえているが、もはや笑えなくなっている。陰に陽に世界を牛耳っている大企業たちの仲間入りをしている。まあ便利だからいいか、なんて。

 

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 魚を釣ろう、そう考えて、どう釣るかといったら、まあルアーでいこう、となった。気後れしつつ釣具屋に向かい、勧められるまま竿と糸とルアーを買って、休暇ののこりを釣りに充てた。わけもわからず竿を振った。魚が釣れたのはおよそ10日後のことである。その前日にアメフラシが釣れているが、数には入れない。

 

 魚がかかったときのことはよく覚えていない。控えめにいって夢中だったからだ。「頼む、糸よ切れないでくれ」「頼む、おとなしく寄ってくれ」と念じつづけていた。ただの神頼みである。

 

 徐々に魚が抵抗を弱めて、岸に寄ってくるとともに、いったい何が上がってくるのかと、期待というより恐ろしい気がした。「何か得体の知れない奴が近づいてくる」というのは、ホラーの定義のひとつであるというが、ほんとうにそういう感じである。

 

 それで結論からいうとシーバスだったのだけれど、はじめて砂浜にずり上げたときの気持ちは、これもうまくあらわせない。自分の心臓の鼓動が聞こえるくらいには興奮した。

 

 しかしながら、陸に上がった魚を見ていたら、何かしてはならぬことをしてしまった感じもした。「たかが一尾でアホか」というはなしだが、手が震えた。

 

 おぼつかない手つきで締めて、ワタは浜辺のトンビに投げてやった。誰に急かされているわけでもないのに、そのあいだずっと必死になっていた。

 

 ママチャリを漕ぎながらの帰り道、ようやく喜びがやってきた。酒屋に寄って熊本の『香露』を買った。鼻歌交じりに家に帰って、刺身にして食った。