古寺巡礼

 異なる結果を期待しておなじことを何度も試行していたら「頭がうだっている」といわれても仕方がないのかもしれない。

 

 さておき、登りのための修業は、昔に比べて相当に洗練され、深化しているのはたしかでありながら、打ち捨てられ乗り越えられたトレーニング法がふっと復活してきたりすることもあるようです。このネット時代には、情報は玉石混交で過去も未来もなく一列に並んでしまうから、かえって必要のないものを選んでしまうリスクもある、ということだろうか。

 

 というわけで、いまの知見からして「これやらんでいいでしょ」というトレーニングがウェブ上に載っていて、わりにdecentな意見のように感じたので、ひとまずメモ。

 

1. 長時間のデッドハング

 

 以前の記事でも触れたとおり、15秒以上のハングはやめたほうがよさそう。理由も同様で、実際のクライミングのリズムに照らして最適でないから。また、これだと少なくともストレングスは伸びない。

 

 そして持久力を上げたければ、一回のぶら下がり秒数を伸ばすより、リピーターをした方が適切である。長時間のアイソメトリック運動は、短めのそれに比して継続疲労による障害を起こしやすい、という意見もあるらしい。高強度で失敗するまで続けるような場合はとくに。

 

 リピーターはたとえば7-3秒、6-4秒など。これでストレングス狙いなら1〜2分。持久力なら4〜6分になるように調整するのがよい。

 

2. フルロック

 

 バーカーラダーというトレーニング器具がある。昔のDVDでしか観たことがないが、ひもとラングで前傾した梯子をつくってそれをキャンパしていくもので、ラング間の距離がちょうどフルロックしたくらいになっている。『Real Thing』でジェリー・モファットがけっこうな高さまで行って戻ってしていた記憶がある。

 とりあえずこれはどうしても肘に良くないようです。たしかにモファット氏にしても、長い間肘の怪我に悩まされていたというからなあ。

 

 フルロックのトレーニングというのはどうもリスキーみたいである。せいぜい70-120°くらいでの修業を多めに、フルロックは少なめに、で。困ったことに、要ることは要るんだよな。

 

3. ウォームアップ時の静的ストレッチ

 

 これもいっとき忘れ去られていたもの。出力を低下させてしまうので宜しくないのはやはり事実であるもよう。個人的には「まあやってもいいんじゃないの」と思っているのやが。何せ動的ストレッチの方が推奨されている。

 

4. スクワットとベントレッグド・デッドリフト

 

 スクワットなんて王道種目だからよさそうなものだけれど。デッドリフトも取り入れているクライマーは結構いるよな。

 パワーウェイトレシオの点から考えて、そしてこのちっさい指で身体を持ち上げることを考えて、また現にトップクライマーで競輪選手のような脚の人間がいないことに鑑みて、また筋肉の部分痩せがすこぶるむずかしい点を鑑みて、バーベルをつかった上記種目はやめたほうがいいのでは、だって。足を伸ばしたデッドリフトならいいんじゃないかといっているが、このあたりはやったことがないからちょっとよくわからない。

 スラブがうまくなりたければ、脚力を鍛えるより、スラブをやりなさいということか。

 

5. ブロックごとのピリオダイゼーション

 

 一定期間パワーしかしない。この時期は持久力しかしない。あるいはストレングスしかしない、など。これに替わるものとして多くのクライマーがやっているのは、フォーカスする分野以外のトレを少し入れてキープするというもの。週3でパワー、週1で持久力、みたいなイメージ。ひとつのフェイズがだいたい3〜6週間の感じで、これは組んだプログラムぜんたいの長さに依存する。

 ひとことにつづめると「ある種のトレーニングから長期間離れてしまわないように注意せよ」ということになるか。

 

 以上、報告おわり。