Glass Ceiling

 「登れねえ」などとつぶやいて、打ちまくって登れるようになる。その上のグレードで、今度はヨレるとなったら4×4などとりいれて、どうにか登れるようになる。「おおこの調子ならもっといけそうだ」と思うのも束の間、見えない壁につきあたる。トレーニングする。伸びぬ。鍛える。上がらぬ。さらに鍛える。依然として強くならない。アホほど鍛える。燃え尽きる。

 

 パワー不足だ。「テクニックがあればパワーは要らない」というのは半分ウソだ。テクニックをつかうのにもパワーは要る。

 

 なにをやっても伸びない状態が数年もつづいたら、「このへんがフィジカルの飽和点なのか」と感じることもあるかもしれない。遺伝的限界というやつ。トップクライマーはミュータントなのだと。でも安心していい、そこまで到達してしまっている可能性はまずない。だいたい、限界レベルのトレーニングを周期的に変え、工夫を凝らして、しかも毎回ギリギリまで頑張っている人間が、プロ以外にそうそういるとは思われない。

 

 自分に顕著な弱点があると分かっている人は幸いである。弱点が不明瞭になるほど、トレーニングの方向性を定めづらくなるから。

 

 あるいは弱点がわかっていても、見ないふりをしてしまう。得意を伸ばすほうがたのしいからだ。とはいえその状態で「限界だ」とボヤくのは、まだ早いのだろう。

 もうすこしやってみよう。