いーわー

 弱点を克服する、得意を伸ばす、どちらもあって、つきつめていくと、取り組みを阻むのは気持ということになってくる。伸びが見えにくくなるほど、インセンティブは下がってくるものな。

 

 得意を伸ばしてグレード更新につながることもあれば、そうならないこともある。弱点と得意の関係はそれほど単純でない。ひとつ弱点を減らす代わりにひとつ得意を増やせばそれでプラマイゼロというわけにいかない。だいいち、それでは味気ないよね。

 

 弱点を見つめるときも、得意をさらに伸ばすときも、両方関わってくるもの、それはやはりメンタルだろう。なんどもフォールしたり、なかなかムーブが見えてこなかったり、あるいはちょっとした指の痛みだったり、仕事上の心配ごとだったり、本当に無数にある。それでトライを中止するとまではいかなくても、限界をプッシュする勢いを、たぶん無意識に、すこしだけ緩めてしまう。

 

 困難をたのしむメンタルを持つのは、いうほど簡単ではない。いつでも降りられる遊びであればなおさらだ。こうした境地にいたるにはどうすればいいか、このように問うだけでも、いくらかの価値があるように思う。

 

 思い起こしてみよう。種々の困難なムーブに取り組み、ひとつずつ解決し、つなげ、最後に岩の上に立っている自分の姿を。己にとってむずかしい動きを連続して行おうとするとき、トライの99%は失敗している。そういうものだ。

 

 では成功したとき、どうなっている? 引き出された闘争心で、気がついたら完登していることもあるだろう。あるいはまるで水のようなこころになって、痛み、疑念、不信、一切が頭からとりはらわれ、動きつづけることのみに集中しているかもしれない。

 

 いずれも無だ。ただし、それはどこまでも充実した無だ。気づくと岩の上に立っている。音と光が戻ってくる。

 

 こんな体験をしてしまったら、まあ、かんたんにはやめられないね。

 

 さ、今週も、岩に行こう。