ことだまの力

 しかしつくづく思うのだけれど、引きつけは技術である。ランジの際の下半身の動きも技術だし、保持力もなかば技術だよなあ。テクニック志向にも程というものがあるが、クライマーは放っておくとパワー志向になってしまうので、このくらいでちょうどいいのかもしれない。  

 

 動き出しの時に上半身から動くと足がスッポ抜けることがある。いったん腰を落とすと、次のホールドが遠くなるので気がすすまない面もあるが、自然と足に荷重が移るので、足の力が使いやすくなるように感じる。それとは逆に高重心でポンポン動いていった方がいい場合もある。動きの引き出しとして、両方ともしまっておくのがいいのかな。

 

 足に荷重しようとしてつま先に力をこめすぎても滑ってしまうことがある。フリクションの限界をたやすく超えてしまうのだ。そんなときは腰や膝の移動で体重を移すことを考えるとうまくいくことがある。

 

 また、足首から先を動かさないように意識すると有効なこともある。「足首から上が動いていることをホールドに悟らせない」と考えると動きも変わってくる。接地面が動かず、圧も変わらなければ、滑る道理がないものね。

 

 反対に、足首を使ってホールドを蹴り離すような動きが距離出しに必要なケースもある。これまた両方引き出しに入れておこう。

 

 このあたり、中心である腰を移動させることを先に考えると、末端も自然にいい具合に動いてくれそうな気はする。自然なカーブを描くようにフットホールドに荷重できると、滑りにくいし、滑りはじめがどこになるかを察知することもできるようになるのかな。このあたり深すぎてちょっとよくわからない。

 

 さいきん、ホールドを持つときの意識の仕方でおもしろく思ったのは「抜けやすい草を掴むようにホールドを持て」というもので、さっきの足首の話もそうだが、こんな風にことばにすると、不思議と動きにも影響が出るみたいである。まあこれにしても暴力的にぶっ叩いたほうがとまることもあるから、一概にはいえないのだが。

 

 たぶん強く叩くことを意識すると、無意識に上から行こうとするので距離が出るのと、叩いた後に身体が高く上がって、それが振られに耐えるのに有効な局面があるものと推察される。このあたり、オブザべの段階で動きの選択ができるようになりたいものである。ひとつずつ試していたら指皮がいくらあっても足りない。

 

 何せことだまの力は大きいから、行き詰まったときに思い出してみよう。以上、報告おわり。